「40代の転職は難しい」という話は、転職を考え始めた人が最初に耳にする言葉のひとつです。ただ、実際の統計を見ていくと、難しさの中身は年齢そのものというより、企業が40代に何を求めているかのズレにあることが分かります。ここでは厚生労働省と大手人材会社の調査をもとに、40代の転職市場の実態と、選考に進むための準備を整理します。
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40代の転職は、実際には増えている
まず押さえておきたいのは、ミドル層の転職が近年活発になっているという事実です。マイナビの転職動向調査2026年版(2025年実績)によると、2025年の正社員の転職率は7.6%で、調査開始以降で最高水準となりました。同調査は、この背景として40代・50代の転職が活発化していること、いずれも2021年以降右肩上がりで上昇が続いていることを挙げています。
つまり「40代は転職しない・できない」という前提は、少なくとも数年前の感覚です。人手不足を背景に、経験者を中途で採る動きは広がっています。
それでも「難しい」と言われる理由
転職する人の割合は20代の半分程度
厚生労働省の令和6年 雇用動向調査で、年齢階級別の転職入職率(1年間に転職して入職した人の割合)を見ると、次のようになっています。
- 25〜29歳:男性15.1%/女性16.8%
- 40〜44歳:男性6.8%/女性10.2%
- 45〜49歳:男性6.0%/女性10.7%
男性の場合、40代の転職入職率は20代後半のおよそ4割程度にとどまります。市場全体で見れば、40代は「動く人が少ない層」であることは確かです。母数が少なければ、周囲に成功例も失敗例も少なく、情報が入りにくい。これが体感的な難しさにつながっています。
見られるものが「伸びしろ」から「実績」に変わる
20代の中途採用では、多少経験が足りなくても人柄や学習意欲で採用されることがあります。一方40代では、入社後すぐに戦力になるか、既存メンバーとどう組めるかが判断の軸になります。「これまで何をしてきたか」を、職種の言葉ではなく成果の言葉で説明できるかどうかが問われます。
また、40代の求人は職種・ポジションが絞られる傾向があります。応募できる求人の絶対数が20代より少ないため、条件を細かく決めすぎると候補がほとんど残らない、という事態が起きやすくなります。
年収は必ずしも下がらない
「40代で転職すると年収が下がる」という話もよく聞きますが、統計上はそう単純ではありません。同じ雇用動向調査で転職入職者の賃金変動を見ると、40代は次のような結果でした。
- 40〜44歳:増加45.9%/変わらない23.7%/減少29.0%
- 45〜49歳:増加46.4%/変わらない26.9%/減少23.8%
- 全年齢計:増加40.5%/変わらない28.4%/減少29.4%
全年齢の平均(増加40.5%)と比べても、40代の「増加」割合はむしろ高めです。一方で、55〜59歳以降は減少が増加を上回る形に変わります。40代は、賃金面でまだ上振れを狙える最後のゾーンと見ることもできます。
ただし過度な期待は禁物です。前述のマイナビ調査では、転職後の平均年収は533.7万円で転職前より19.2万円増でしたが、増加額が大きいのは30代(+32.4万円)と20代(+21.5万円)で、50代は減少しています。同調査は40代・50代について「20・30代と比較して転職後の平均年収の伸びが緩やか」とコメントしています。上がる人は上がるが、全体としては横ばい寄り、という理解が実態に近そうです。
40代が転職を考えるきっかけ
雇用動向調査で前職を辞めた理由を見ると、40〜44歳の男性では「職場の人間関係が好ましくなかった」が16.0%と目立ち、45〜49歳の男性では「給料等収入が少なかった」が14.3%で上位に入っています。
加えて、マイナビ調査では2025年に転職した人の52.6%が「前職で自身のキャリアに停滞感を感じていた」と回答しています。きっかけとして挙がったのは「毎日同じ仕事内容の繰り返し」「定年までのキャリア予定を知らされて、この先の役職がわかっていた」といった声でした。40代の転職は、待遇への不満だけでなく、この先10年〜20年の見通しが立ってしまったことへの反応という側面が強いようです。
選考を通すための準備
実績を数字と再現性で語る
職務経歴書でも面接でも、40代に対して採用側が知りたいのは「その成果は、うちでも再現できるのか」です。「売上を伸ばした」ではなく、「担当エリアの既存顧客20社に対して四半期ごとの提案体制をつくり、2年で売上を1.3倍にした」というように、状況・打ち手・結果をセットで書きます。数字が出せない職種でも、業務時間の削減幅や対応件数、引き継ぎ後の定着など、比較できる形にする工夫はできます。
マネジメント経験を棚卸しする
40代の求人ではマネジメント経験が問われる場面が増えます。役職がついていなくても、後輩指導、業務フローの設計、他部署との調整、外注管理などは立派な実績です。「何人を、どの範囲で、どのくらいの期間」まで具体化しておくと、プレイングマネージャー職などで評価されやすくなります。
条件の優先順位を決めておく
年収、勤務地、職種、働き方をすべて満たす求人は、40代ではまず見つかりません。絶対に譲れない条件を2つまでに絞り、それ以外は許容範囲を数字で決めておく(例:年収は前職比マイナス50万円まで、通勤は片道60分まで)と、判断が速くなります。応募数が確保できないと選考の練習機会も減るため、間口を狭めすぎないことが結果的に近道になります。
在職中に、期間に余裕を持って進める
40代は求人の母数が少ないぶん、応募から内定までの期間が長くなりやすい層です。収入を止めずに探せる在職中の転職活動のほうが、条件面で妥協しにくくなります。書類作成と情報収集を先に済ませ、応募のピークを作る形で進めると、在職中でも回しやすくなります。
あわせて確認しておきたいこと
40代の転職では、目先の年収以外に確認しておくべき項目があります。
- 退職金・企業年金:勤続年数で受取額が変わる制度が多く、退職時期によって差が出ます。就業規則や退職金規程で計算方法を確認しておきます。
- 住宅ローンなどの審査:在職期間が短いと審査に影響する場合があります。借り換えや新規借入の予定があるなら、順序を検討しておきます。
- 家族との合意:勤務地や収入の変動は家庭にも影響します。条件を絞る段階で共有しておくと、内定後に慌てずに済みます。
関連書籍
40代のキャリアの考え方を整理したいときは、書籍で全体像をつかむのも手です。
関連する転職エージェント・求人サービス
40代の求人は公開されていないポジションも多く、非公開求人を扱うエージェントの併用が有効です。目的に応じて使い分けるとよいでしょう。
まとめ
40代の転職は、20代のように求人の選択肢が広いわけではありません。転職入職率は20代後半の半分程度で、実績とマネジメント経験がそのまま評価対象になります。一方で、転職率は過去最高水準まで上がり、賃金が増加した人の割合も全年齢平均を上回っています。
難しいのは「40代だから」ではなく、準備なしで動いた場合です。実績を再現性のある形で言語化し、条件の優先順位を決め、在職中に時間の余裕を持って進める。この3つを押さえておけば、40代でも選択肢は残されています。
参考資料
新卒で入った会社を1年で辞め、情報がないまま手探りで転職活動をした経験があります。その後HR・人材業界で7年間、採用や転職支援の現場に携わってきました。「知っていれば防げた遠回り」を減らせるよう、業界で得た知見とデータをもとにした転職・キャリアの情報をこのブログで発信しています。エージェント選びや書類の書き方など、実践的な内容を中心に更新中です。
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