「今の会社を辞めるか迷っているけれど、この年齢で転職している人はどのくらいいるのだろう」——そう考えたことがある方は多いと思います。感覚や周囲の話だけで判断すると、実態より多く見えたり少なく見えたりしがちです。
厚生労働省の「雇用動向調査」には、1年間にどれくらいの人が別の会社へ移ったかを年齢層ごとに集計した数字があります。この記事では、最新となる令和6年(2024年)の結果をもとに、年代別・男女別の転職の広がり方を整理します。
そもそも「転職入職率」とは
転職入職率は、その年の1月1日時点の常用労働者数に対して、1年間に「前の勤め先を離れて新しい勤め先に入った人」がどれくらいいたかを示す割合です。新卒などの未就業から入職した人は含まれません。つまり「働いていた人が別の会社に移った割合」と考えると分かりやすいです。
2024年の転職入職率は全体で9.7%でした。前年(10.4%)から0.7ポイント下がっています。ざっくり言えば、働いている人のおよそ10人に1人が1年のうちに勤め先を変えている計算です。転職入職者数でみると492万人になります(厚生労働省「令和6年 雇用動向調査結果の概要」)。
男女別では男性が8.7%、女性が10.8%。就業形態別では一般労働者が8.3%、パートタイム労働者が13.5%で、雇用の形によっても差が出ています。
男性は20代後半がピーク、40〜50代でいったん下がる
年齢層ごとに見ていきます。まず男性です。

19歳以下を除くと、25〜29歳の15.1%が最も高く、そこから年齢が上がるにつれてなだらかに下がっていきます。50〜54歳では5.1%と、20代後半の3分の1程度の水準です。一方で60〜64歳(10.0%)、65歳以上(10.1%)で再び上がっているのが特徴的で、これは定年や契約期間の満了をきっかけに勤め先を変える人が多いことを反映しています。
実際、前職を辞めた理由を年齢別に見ると、男性の60〜64歳は「定年・契約期間の満了」が54.6%、65歳以上でも50.1%を占めています。同じ「転職」でも、20代のそれと60代のそれでは背景がまったく違うということです。
女性は40代後半でも10%台を保っている
続いて女性です。

ピークが25〜29歳(16.8%)である点は男性と同じですが、その後の下がり方が緩やかです。35〜39歳で10.5%、40〜44歳で10.2%、45〜49歳では10.7%と、40代を通じて10%前後を維持しています。同じ年代の男性が6〜8%台であることを考えると、差はかなり大きいと言えます。
厚生労働省の概要でも、19歳以下と60〜64歳以上を除くすべての階級で女性が男性を上回っていると整理されています。背景には、パートタイム労働者の比率が女性で高いこと、出産・育児や介護といったライフイベントに合わせて働き方を変える人が一定数いることなどが考えられます。ただし調査はその因果関係までは示していないため、あくまで傾向として押さえておくのが妥当です。
年齢が上がるほど「賃金が増えた人」の割合は下がる
もう一つ、転職後の待遇についても見ておきます。転職入職者のうち、前職と比べて賃金が「増加」した人の割合を年齢層別に並べたものです。

20〜24歳の50.5%を最高に、45〜49歳(46.4%)まではおおむね45〜50%前後で推移しています。ところが50〜54歳で39.0%、55〜59歳で27.4%、60〜64歳では13.6%と、50代以降で急に落ち込みます。60代前半は定年後の再雇用が多く含まれるため、待遇が下がる形での移動が多いと読み取れます。
逆に言えば、40代までは「転職したら年収が下がるのが当たり前」というわけではなく、増えた人と減った人がおおむね拮抗しているのが実情です。ちなみに全年齢の合計では、増加が40.5%、減少が29.4%、変わらないが28.4%となっています。
データから読み取れる3つのこと
1. 20代後半が最も動く時期
男女とも25〜29歳がピークです。新卒で入った会社での経験が3〜5年たまり、他社からも評価されやすくなるタイミングと重なります。この年代で転職を考えること自体は、統計的にはごく一般的な行動です。
2. 30代後半以降は「動く人が減る」だけで、ゼロではない
40〜44歳の男性でも6.8%、女性なら10.2%が1年のうちに勤め先を変えています。割合としては20代より小さくなりますが、人数で見れば決して珍しい話ではありません。年齢を理由に最初からあきらめる必要はない、というのがデータから言えることです。
3. 50代半ばからは条件面の見方を変える必要がある
55〜59歳で賃金が増えた人は27.4%。これは20〜40代の半分程度です。この年代で転職を検討する場合は、年収の維持だけをものさしにすると選択肢がかなり狭くなります。勤務地、勤務時間、業務内容、その後の就業期間といった要素も含めて総合的に比較したほうが、納得のいく判断につながりやすくなります。
数字を自分の判断にどう使うか
統計はあくまで全体の傾向であって、個人の結果を保証するものではありません。同じ40歳でも、職種や業界、これまでの経験によって状況は大きく変わります。
それでも、こうした数字を知っておくことには意味があります。「この年齢では無理だろう」という思い込みが実態と合っているかを確かめられますし、逆に「今なら簡単に決まるはず」といった楽観に歯止めをかけることもできます。転職入職率が9.7%ということは、裏を返せば9割の人はその年に会社を変えていないということでもあります。
迷っている段階であれば、まずは自分の年代・性別の数字がどのあたりにあるかを確認したうえで、なぜ動きたいのか、動いた先で何を優先するのかを言葉にしてみることをおすすめします。数字はその整理を手伝ってくれる材料の一つです。
まとめ
- 2024年の転職入職率は全体で9.7%(男性8.7%、女性10.8%)
- 男女とも25〜29歳がピーク。男性15.1%、女性16.8%
- 女性は40代でも10%前後を維持し、同年代の男性より高い
- 男性は60歳以降で再び10%台に。定年・契約満了による移動が中心
- 賃金が増えた人の割合は45〜49歳まで45%前後、50代以降で大きく低下
年代によって、転職の「起きやすさ」も「起きたあとの結果」も変わります。自分がどの位置にいるかを把握したうえで、次の一歩を検討してみてください。
出典
新卒で入った会社を1年で辞め、情報がないまま手探りで転職活動をした経験があります。その後HR・人材業界で7年間、採用や転職支援の現場に携わってきました。「知っていれば防げた遠回り」を減らせるよう、業界で得た知見とデータをもとにした転職・キャリアの情報をこのブログで発信しています。エージェント選びや書類の書き方など、実践的な内容を中心に更新中です。
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