転職を考えるとき、多くの人が最初に気にするのが「収入は上がるのか、それとも下がるのか」という点だと思います。周りの体験談を聞いても、年収が大きく伸びた人もいれば、思ったより下がってしまった人もいて、実際のところどうなのかが見えにくいテーマです。
この記事では、厚生労働省が毎年公表している「雇用動向調査」の最新結果(令和6年=2024年分)をもとに、転職した人の賃金が実際にどう変わったのかを整理します。数字はすべて公的統計からの引用で、出典も明記しています。
転職後に賃金が「増加」した人は40.5%
厚生労働省の令和6年雇用動向調査によると、2024年の1年間に転職した人(転職入職者)の賃金変動は、前職と比べて「増加」した割合が40.5%、「減少」した割合が29.4%、「変わらない」が28.4%でした。

内訳を見ると、「1割以上の増加」が29.4%で、増加した人の大半は1割以上の伸びを得ています。一方で「1割以上の減少」も21.7%あり、上がる人と下がる人のどちらもそれなりの幅で動いていることがわかります。
つまり、転職すれば自動的に収入が増えるわけではなく、おおまかに言えば「4割が増、3割が減、3割が横ばい」という分布です。増えた人と減った人の差は11.1ポイントで、全体としては増えた人のほうが多い、という読み方になります。
「増加」の割合は5年前より上がっている
同じ調査の推移を見ると、「増加」した人の割合は近年少しずつ高まっています。

2020年〜2022年は35%前後で横ばいでしたが、2023年に37.2%、2024年に40.5%と上昇しました。同じ期間に「減少」の割合は35.2%(2021年)から29.4%(2024年)へ下がっています。人手不足を背景に、採用時の提示条件が改善しやすい状況が続いていることがうかがえる数字です。
ただし、これは市場全体の傾向であって、個別の転職がどうなるかを保証するものではありません。あくまで「以前よりは条件交渉の余地が広がりやすい時期」という程度に受け止めておくのが現実的です。
年齢によって結果は大きく変わる
賃金変動は年齢階級によってかなり違います。「増加」した人の割合を年齢別に並べると次のようになります。

20代から40代までは45〜50%台とおおむね横並びで、50〜54歳で39.0%、55〜59歳で27.4%、60〜64歳では13.6%と、50代後半から急に下がります。60〜64歳では「1割以上の減少」が53.9%にのぼり、定年や契約期間の満了にともなう再就職が多く含まれることが影響していると考えられます。
逆に言えば、40代までであれば年齢そのものが賃金の増減を大きく分ける要因にはなっていない、というのがこのデータの示すところです。
働き方の形でも差が出る
同じ調査では、就業形態別の数字も出ています。一般労働者どうしの移動(雇用期間の定めがないケース)では「増加」42.0%に対して「減少」25.7%で、差は16.3ポイント。パートタイム労働者どうしの移動では「増加」36.7%、「減少」21.3%で、差は15.4ポイントでした。
どちらも増加が減少を上回っていますが、パートタイムでは「変わらない」が39.7%と高く、条件が動きにくい傾向が見えます。フルタイムの正社員として動く場合のほうが、賃金が変わる幅そのものは大きくなりやすいということです。
「賃金が下がった約3割」をどう読むか
注目されやすいのは増えた側の数字ですが、実務的に重要なのは減った側です。2024年でも29.4%、およそ3人に1人は前職より賃金が下がっています。
賃金が下がるケースには、たとえば次のような背景があります。
- 未経験の職種・業界に移り、いったん経験年数がリセットされる
- 残業が多い職場から少ない職場に移り、残業代の分だけ支給額が減る
- 年功的な給与体系の会社から、成果に応じた体系の会社へ移る
- 勤務地や労働時間など、収入以外の条件を優先して選んだ
このうち後半の2つは、本人にとっては納得のうえでの選択であることも多く、「下がった=失敗」とは限りません。逆に、意図しないまま下がってしまうのは、求人票の給与欄の読み方が曖昧なまま進んだ場合です。基本給・固定残業代・賞与の扱いを分けて確認しておくと、入社後のギャップは減らせます。
公的データを自分のケースに当てはめるときの注意点
1. 比較しているのは「前職の賃金との差」
この調査でいう賃金変動は、転職した人が前の職場でもらっていた賃金と、転職先での賃金を比べたものです。転職から数年後にどうなったかまでは含まれていません。入社時点で横ばいでも、その後の昇給ペースが違えば結果は変わります。
2. 自営業からの転職は含まれない
調査の注記では、転職入職者のうち前職が雇用者だった人(かつ調査時点で在籍している人)を対象としており、自営業からの転職は含まれていません。フリーランスから会社員に戻るケースなどは、この数字の外側にあります。
3. 平均ではなく分布で見る
「40.5%が増加」という数字は、あくまで増えた人の割合です。何%増えたかの平均額を示すものではありません。自分の場合はどうかを考えるときは、同じ職種・同じ年齢層の求人が実際にいくらで出ているかを見るほうが、判断材料としては具体的です。
収入以外の条件も一緒に見ておく
同じ調査では、転職した人が前職を辞めた理由も集計されています。2024年は、男性では「給料等収入が少なかった」が10.1%、「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」が8.6%。女性では「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」が12.8%、「職場の人間関係が好ましくなかった」が11.7%で、収入以外の理由が上位に来ています。
実際に転職先を選ぶ段階でも、賃金だけを軸にすると、労働時間や通勤時間が悪化して結果的に満足度が下がることがあります。年間休日、残業の実態、通勤の負担といった項目を賃金と並べて比較しておくと、判断のぶれが小さくなります。
まとめ
厚生労働省の令和6年雇用動向調査から見えたことを整理します。
- 2024年に転職した人のうち、賃金が「増加」した割合は40.5%、「減少」は29.4%、「変わらない」は28.4%
- 「増加」の割合は2020年の34.9%から上昇傾向にある
- 20代〜40代では「増加」が45〜50%台とほぼ横ばい、50代後半以降は下がる
- それでも3割近くは賃金が下がっており、条件の確認は欠かせない
データはあくまで全体の傾向です。自分の転職がどうなるかは、職種・経験・応募先の給与体系によって変わります。市場の空気を知るための背景情報として使いつつ、最終的には個別の求人条件を一つずつ確認していくのが確実です。
出典
- 厚生労働省「令和6年雇用動向調査結果の概要」https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/25-2/index.html
- 同上「3 転職入職者の状況」(表5・表6・表7、図5)PDF
新卒で入った会社を1年で辞め、情報がないまま手探りで転職活動をした経験があります。その後HR・人材業界で7年間、採用や転職支援の現場に携わってきました。「知っていれば防げた遠回り」を減らせるよう、業界で得た知見とデータをもとにした転職・キャリアの情報をこのブログで発信しています。エージェント選びや書類の書き方など、実践的な内容を中心に更新中です。
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