転職を考えはじめたとき、「自分が辞めたい理由は、他の人と比べて特殊なのだろうか」と気になることがあります。厚生労働省が毎年公表している「雇用動向調査」には、実際に転職した人が前の職場を辞めた理由が、男女別・年齢別に集計されています。ここでは令和6年(2024年)の結果をもとに、どんな理由が多いのか、男女や年代でどう違うのかを見ていきます。
この記事で使うデータについて
取り上げるのは厚生労働省の「令和6年雇用動向調査」です。全国の事業所を対象にした統計で、1年間に転職して入職した人が前職を辞めた理由を、選択肢別の割合で示しています。個人の主観をアンケートで集めたものなので「本当の理由」とは限りませんが、退職理由の全体像をつかむ材料にはなります。
なお集計項目には「その他の個人的理由」という受け皿の選択肢があり、男性20.2%・女性24.3%と最も高くなっています。内訳が分からない項目なので、以下のグラフでは中身が特定できる理由だけを取り上げています。
男性が前職を辞めた理由

男性で最も多いのは「定年・契約期間の満了」14.1%で、これは60歳以上の階級に集中しています。自分の意思とは別の事情による退職なので、いわゆる「転職を決意した理由」として見るなら、次に多い「給料等収入が少なかった」10.1%が実質的なトップです。以下、「職場の人間関係が好ましくなかった」9.0%、「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」8.6%と続きます。
収入・人間関係・労働時間の3つで3割近くを占めており、仕事の中身よりも働く条件や環境が理由になりやすいことが分かります。一方で「仕事の内容に興味を持てなかった」は4.4%、「能力・個性・資格を生かせなかった」は3.8%にとどまりました。
女性が前職を辞めた理由

女性で最も多いのは「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」12.8%、次いで「職場の人間関係が好ましくなかった」11.7%です。男性で1位だった「定年・契約期間の満了」は10.7%で3番目にきています。
男性と比べると、労働条件と人間関係の割合が高く、収入(8.3%)はやや低いという形です。また「結婚」1.9%、「出産・育児」1.8%は、数字としては小さめでした。ライフイベントが退職理由として語られやすい印象がありますが、統計上は労働条件や人間関係のほうがずっと多く挙がっています。
男女で差が出るのはどこか
同じ調査で男女を並べると、差がはっきり出る項目は次の3つです。
- 労働時間・休日等の労働条件:男性8.6%に対して女性12.8%
- 職場の人間関係:男性9.0%に対して女性11.7%
- 給料等収入:男性10.1%に対して女性8.3%
男性は収入、女性は時間と人間関係が相対的に重い、という傾向が読み取れます。ただしこれは平均の話で、個人差のほうが大きい点には注意が必要です。転職先を選ぶときに何を優先するかは、統計の傾向ではなく自分の状況から決めるほうが納得しやすくなります。
30代前半で「会社の将来が不安」が跳ね上がる

年齢別に見ると、特徴的な動きをするのが「会社の将来が不安だった」という理由です。男性では20代前半で5.0%だったものが、30〜34歳で14.9%と最も高くなり、その後は35〜39歳10.5%、40代で10%前後と落ち着いていきます。
30代前半は、その会社での数年分の経験が積み上がり、社内の事情や業績の見通しがある程度見えてくる時期です。同時に、まだ他社に移る選択肢も現実的に残っています。会社の先行きへの不安が行動につながりやすいタイミング、と言えそうです。
前年と比べて増えた理由・減った理由
令和5年(2023年)との差を見ると、動きが分かれています。
- 男性で伸びたのは「会社の将来が不安だった」+2.2ポイント、「給料等収入が少なかった」+1.9ポイント
- 女性で伸びたのは「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」+1.7ポイント、「給料等収入が少なかった」+1.2ポイント
- 逆に減ったのは「仕事の内容に興味を持てなかった」(男性−3.0、女性−1.4ポイント)や「能力・個性・資格を生かせなかった」(男性−1.3、女性−1.7ポイント)
仕事のやりがいに関する理由が減り、収入や労働条件といった待遇面の理由が増えた形です。同じ調査では、転職後に賃金が「増加」した人の割合が40.5%と前年から3.3ポイント上がっており、待遇を理由に動いた人が一定の結果を得やすい状況だったこともうかがえます。
「辞めた理由」を面接で話すときの整理のしかた
ここまで見てきた理由の多くは、そのまま面接で口にすると印象が良くない類のものです。ただ、理由を隠す必要はありません。事実として何が起きていたのかと、そこから自分が何を望むようになったのかを分けて話すと、伝わり方が変わります。
収入が理由の場合
金額そのものより、評価の仕組みに触れると具体的になります。「成果が処遇に反映される仕組みが整った環境で働きたい」といった形です。前職の給与水準を批判する言い方は避けたほうが無難です。
労働時間・休日が理由の場合
「残業が多かった」だけで終えず、月あたりの時間や繁忙期の状況など、事実を淡々と添えます。そのうえで、どういう働き方なら力を出せるのかを続けます。
人間関係が理由の場合
個人への不満として語ると、聞き手は「うちでも同じことになるのでは」と考えます。組織の進め方や情報共有のあり方など、仕組みの話に置き換えられないかを検討してみてください。
会社の将来が不安な場合
業界や事業の状況を客観的に説明し、そのうえで自分がどんな環境で経験を積みたいかにつなげます。前職を否定する材料にはせず、自分の選択の理由として話すのが基本です。
まとめ
令和6年の雇用動向調査では、前職を辞めた理由として、男性は収入、女性は労働時間・休日が上位に挙がりました。人間関係はどちらでも上位に入り、前年と比べると待遇面の理由が増えています。30代前半の男性では会社の先行きへの不安が目立つのも特徴でした。
数字はあくまで全体の傾向で、自分の答えを決めてくれるものではありません。ただ「自分だけの事情ではない」と分かるだけでも、退職理由を落ち着いて言葉にしやすくなります。まずは何に困っていたのかを書き出し、次の職場で何が変われば納得できるのかを整理するところから始めてみてください。
出典
新卒で入った会社を1年で辞め、情報がないまま手探りで転職活動をした経験があります。その後HR・人材業界で7年間、採用や転職支援の現場に携わってきました。「知っていれば防げた遠回り」を減らせるよう、業界で得た知見とデータをもとにした転職・キャリアの情報をこのブログで発信しています。エージェント選びや書類の書き方など、実践的な内容を中心に更新中です。
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