「入社して3年以内に3割が辞める」という話は、就職や転職の場面でよく耳にします。ただ、この数字が実際にどこから来ていて、いま何%なのかまで確認したことがある人は少ないかもしれません。
厚生労働省は毎年、新規学卒者の離職状況を公表しています。この記事では最新の公表値をもとに、学歴・入社年次・会社の規模・業界という4つの切り口で早期離職の実態を整理します。数字そのものよりも、その数字を自分の状況にどう当てはめるかまで踏み込んで見ていきます。
新卒3年以内の離職率は大卒で33.8%
厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」によると、令和4年3月に卒業して就職した人のうち、3年以内に離職した割合は次のとおりです。

大学卒は33.8%で、前年の卒業者と比べて1.1ポイント下がりました。短大等卒は44.5%、高校卒は37.9%、中学卒は54.1%です。「3年で3割」という言い方は大卒の数字を指しており、学歴が変わると水準もかなり変わることがわかります。
注意したいのは、この統計が雇用保険の加入・喪失の記録をもとに集計されている点です。つまり「会社を辞めた」という事実だけを数えていて、転職して次の会社に移った人も、いったん働くのをやめた人も、同じ離職者として扱われます。33.8%がそのまま「失敗した人の割合」というわけではありません。
辞めるタイミングは1年目に偏っている
3年以内といっても、実際にはどのタイミングで離職が起きているのでしょうか。大卒の数字を年次ごとに分けると、次のようになります。

1年目が12.1%、2年目が11.9%、3年目が9.9%です。最初の1年がやや高いものの、極端に1年目に集中しているわけではなく、3年間を通してほぼ同じくらいのペースで離職が起きています。
入社直後の数か月で「合わない」と感じて辞めるケースだけでなく、2年目・3年目に仕事の全体像が見えてきてから進路を考え直すケースも相当数あることが読み取れます。1年目を乗り切れば安心、という単純な話ではありません。
会社の規模によって離職率は大きく変わる
同じ大卒でも、就職先の事業所規模によって離職率は倍近く違います。

従業員5人未満の事業所では57.5%、5〜29人では52.0%と半数を超える一方、1,000人以上の事業所では27.0%にとどまります。規模が大きくなるほど離職率が下がる、きれいな傾斜になっています。
この差の背景としては、研修や配属の仕組みが整っているか、給与や休日などの労働条件、部署異動によって環境を変えられる余地があるかといった要素が考えられます。ただし統計はあくまで平均であり、小規模でも定着率の高い会社はありますし、大企業でも部署によって状況は違います。求人を見るときは、規模というラベルだけで判断せず、実際の勤務条件や離職率を個別に確認したほうが確実です。
業界による差も無視できない
産業別に見ると、離職率が高い上位5産業は次のとおりです(「その他」を除く)。

宿泊業・飲食サービス業が55.4%、生活関連サービス業・娯楽業が54.7%と高く、教育・学習支援業44.2%、医療・福祉40.8%、小売業40.4%と続きます。全産業の平均が33.8%なので、上位2産業は平均の1.6倍前後という水準です。
いずれも土日祝日や夜間の勤務が発生しやすく、シフト制で生活リズムが不規則になりがちな仕事が並びます。仕事内容そのものへの適性というより、働き方や勤務時間帯との相性が定着に影響している面がありそうです。逆にいえば、同じ職種でも勤務形態が違う会社に移ることで続けられるようになる、というケースもあります。
この数字を自分の状況にどう当てはめるか
平均値は「自分の答え」ではない
離職率のデータは、いま置かれている状況を客観的に見るための材料にはなりますが、辞めるべきかどうかを決めてくれるものではありません。「3割も辞めているなら自分も」と考えるのも、「7割は続けているのだから我慢すべき」と考えるのも、どちらも数字の使い方としては少しずれています。
参考になるのは、自分が感じている違和感が構造的なものかどうかを見分けるときです。たとえば、業界全体として勤務時間帯が厳しい仕事に就いていて、その部分が合わないと感じているなら、同じ業界で会社だけ変えても状況は変わりにくいでしょう。逆に、業務内容には手応えがあるのに人間関係や特定の運用だけが苦しいなら、環境を変えることで解決する可能性があります。
辞める前に整理しておきたい3つのこと
実際に動き出す前に、次の3点を書き出して整理しておくと判断がぶれにくくなります。
1. 何が原因で辞めたいのかを具体的に言葉にする
「合わない」で止めず、業務内容・労働時間・人間関係・給与・将来性のどれなのか、複数あるならどれが一番重いのかまで分解します。次の会社を選ぶときの基準がここから出てきます。
2. 今の会社で解決できる余地があるか確認する
部署異動や担当変更、勤務形態の相談で改善する余地が残っているケースもあります。試したうえでの転職なら、面接で退職理由を聞かれたときにも説明しやすくなります。
3. 在職中に動くか、辞めてから動くかを決める
在職中の転職活動は時間の確保が難しい一方、収入が途切れません。心身の状態が厳しいときは先に離れる判断もありますが、その場合は生活費の見通しを立てておく必要があります。
早期離職のあとに使える選択肢
就職後3年以内で離職した場合、次の転職では「第二新卒」という枠で見られることが多くなります。社会人経験は浅いものの、基本的なビジネスマナーや働くイメージがある人材として、未経験職種でも受け入れる企業が一定数あります。
選考では、短期間で辞めた理由を必ず聞かれます。ここで前職の不満をそのまま並べると、同じ理由でまた辞めるのではないかと受け取られやすくなります。事実は事実として簡潔に伝えたうえで、その経験から次に何を重視するようになったのかを自分の言葉で説明できるようにしておくと、印象は変わります。
また、離職率の数字を見てわかるとおり、早期離職は特別に珍しい出来事ではありません。3人に1人が経験している以上、採用側もそれ自体を理由に一律で落とすわけではないのが実情です。大事なのは経歴の長さより、次にどう働きたいかを説明できるかどうかです。
まとめ
令和4年3月卒の3年以内離職率は、大卒33.8%、短大等卒44.5%、高校卒37.9%、中学卒54.1%。前年と比べると大卒・高卒はやや低下しています。年次別では1年目12.1%、2年目11.9%、3年目9.9%と3年を通じてほぼ横ばい。事業所規模では5人未満の57.5%と1,000人以上の27.0%で2倍以上の差があり、産業別では宿泊業・飲食サービス業の55.4%が最も高くなっています。
数字はあくまで全体の傾向で、個人の判断を代わりに下してくれるものではありません。ただ、自分がいま感じている働きにくさが自分だけの問題なのか、その環境に共通するものなのかを見極める手がかりにはなります。辞める・続けるのどちらを選ぶにしても、いったん状況を分解して言葉にする作業から始めてみてください。
出典:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」
新卒で入った会社を1年で辞め、情報がないまま手探りで転職活動をした経験があります。その後HR・人材業界で7年間、採用や転職支援の現場に携わってきました。「知っていれば防げた遠回り」を減らせるよう、業界で得た知見とデータをもとにした転職・キャリアの情報をこのブログで発信しています。エージェント選びや書類の書き方など、実践的な内容を中心に更新中です。
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