人が増えている業界・減っている業界|産業別の転職入職率データ【厚労省2024年】

転職データ・市場動向

「この業界、これから人が増えるのか、それとも減っていくのか」。転職先を考えるときに気になるところですが、印象だけで判断すると実態とずれることがあります。

厚生労働省の「雇用動向調査」は、1年間にどれだけの人が仕事に就き、どれだけの人が辞めたかを産業別に集計している統計です。ここでは令和6年(2024年)分の結果をもとに、産業ごとの人の出入りを3つの角度から見ていきます。

まず押さえておきたい3つの言葉

雇用動向調査には似た言葉が並ぶので、最初に整理しておきます。

  • 入職率…1年間に新しく入った人の数を、年初の常用労働者数で割った割合。
  • 転職入職率…入職者のうち、前に別の職場で働いていた人(=転職してきた人)だけを取り出した割合。新卒は含みません。
  • 入職超過率…入職率から離職率を引いた数字。プラスならその産業で働く人が増え、マイナスなら減っていることを意味します。

転職を考えるうえでは、2つ目の「転職入職率」が中途採用の入りやすさの目安になり、3つ目の「入職超過率」がその業界が拡大しているか縮小しているかの目安になります。

2024年の転職入職者は492万人

まず全体像です。2024年の1年間に入職した人は747.4万人で、そのうち転職してきた人(転職入職者)は492.0万人でした。常用労働者全体に対する転職入職率は9.7%です。

前年の2023年は転職入職者が541.0万人、転職入職率10.4%だったので、人数・割合とも前年より下がりました。入職率(14.8%)から離職率(14.2%)を引いた入職超過率は+0.6ポイントで、全体としてはわずかに雇用者数が増えた1年だったということになります。(出典:厚生労働省「令和6年雇用動向調査結果の概要」

産業別に見た転職入職率

同じ9.7%という平均でも、産業ごとの差はかなり大きくなります。

産業別の転職入職率(2024年)を示す横棒グラフ

上位に並ぶのは、サービス業(他に分類されないもの)15.9%、宿泊業・飲食サービス業15.1%、生活関連サービス業・娯楽業14.3%。いずれも平均の1.5倍前後で、中途採用の入れ替わりが活発な業界です。一方、金融業・保険業5.5%、製造業5.9%は平均の6割程度にとどまります。

転職入職率が高い業界は、裏を返せば離職率も高い傾向があります。入りやすさと定着しやすさは別の話なので、数字が高いこと自体を「良い業界」と読むのは早計です。

人数で見ると、どこに人が動いているか

率は規模の大小をならしてしまうので、実際の人数も見ておきます。

産業別の転職入職者数(2024年・万人)を示す横棒グラフ

最も多いのは卸売業・小売業の88.3万人、次いで医療・福祉の79.9万人、サービス業(他に分類されないもの)73.4万人と続きます。率では平均を下回っていた製造業も、母数が大きいため45.1万人と4番目の規模です。

率が高い業界と人数が多い業界は必ずしも一致しません。「求人数が多い=競争がゆるい」とも限らないので、率と人数の両方を見ておくと業界のイメージがつかみやすくなります。

人が増えている業界と、減っている業界

最後に、入職率から離職率を引いた入職超過率です。この数字がプラスなら、辞めた人より入った人のほうが多く、その産業で働く人が増えたことになります。

産業別の入職超過率(2024年)を示す横棒グラフ

プラス幅が大きいのは宿泊業・飲食サービス業+3.3ポイント、建設業+1.7ポイント、生活関連サービス業・娯楽業+1.6ポイント。逆にマイナスとなったのは複合サービス事業−1.3ポイント、不動産業・物品賃貸業−1.0ポイント、製造業−0.7ポイントなどです。

ただし、この1年の増減だけで業界の将来を決めつけることはできません。宿泊・飲食のように、前年までの落ち込みからの回復局面で数字が大きく動く業界もあります。あくまで「直近1年でどちらに振れたか」を示す指標として見るのが妥当です。

このデータを自分の転職にどう使うか

3つの数字を組み合わせると、業界ごとの性格がある程度見えてきます。

転職入職率が高く、入職超過率もプラスの業界

宿泊業・飲食サービス業、生活関連サービス業・娯楽業、サービス業(他に分類されないもの)などが当てはまります。中途採用の間口が広く、人員も増えている状態です。未経験からでも入りやすい半面、出入りも激しいので、応募先ごとに定着率や労働条件を個別に確認しておきたいところです。

転職入職率は低いが、入職超過率はプラスの業界

金融業・保険業(転職入職率5.5%、入職超過率+1.1ポイント)、情報通信業(7.4%、+1.0ポイント)、学術研究・専門技術サービス業(8.6%、+1.4ポイント)がこのタイプです。採用の枠自体はそれほど広くないものの、人員は増えている。経験やスキルが問われやすい代わりに、入った後は腰を据えて働きやすい傾向があると読めます。

入職超過率がマイナスの業界

製造業や不動産業・物品賃貸業などです。人が減っている=転職できないという意味ではなく、採用はあっても、それ以上に辞めている人がいる状態を示しています。実際、製造業には年間45.1万人が転職で入っています。応募先の事業がどの分野に属しているかによって状況は変わるので、業界全体の数字より個々の企業の状況を確認するほうが実態に近づきます。

数字を見るときの注意点

雇用動向調査は事業所を対象にした調査で、常用労働者5人以上の事業所が集計対象です。したがって、ごく小規模な事業所や、そこでの人の動きは反映されにくくなります。

また、ここで扱った産業区分はかなり大きな括りです。たとえば「サービス業(他に分類されないもの)」には、職業紹介・労働者派遣業や廃棄物処理業、警備業など、性格の異なる業種が同居しています。自分が目指す職種の状況をそのまま表しているとは限らない点は、念頭に置いておいたほうがよさそうです。

まとめ

2024年の雇用動向調査から見えるのは、次のような姿でした。

  • 転職入職者は492.0万人、転職入職率は9.7%で、いずれも前年より減少
  • 転職入職率が高いのはサービス業、宿泊・飲食、生活関連サービスなど。金融・保険や製造業は低め
  • 人数では卸売・小売、医療・福祉、サービス業が上位
  • 入職超過率がプラスなのは宿泊・飲食、建設、生活関連サービスなど。製造業や不動産業はマイナス

業界の空気感は人によって語られ方が変わりますが、公的統計はその感覚を数字で裏づけたり、修正したりする材料になります。気になる業界がある方は、この記事の数字を出発点に、求人票や実際の面談で個別の状況を確かめてみてください。

出典

リョウ(reworkブログ運営者)
リョウのプロフィール写真

新卒で入った会社を1年で辞め、情報がないまま手探りで転職活動をした経験があります。その後HR・人材業界で7年間、採用や転職支援の現場に携わってきました。「知っていれば防げた遠回り」を減らせるよう、業界で得た知見とデータをもとにした転職・キャリアの情報をこのブログで発信しています。エージェント選びや書類の書き方など、実践的な内容を中心に更新中です。

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